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先進パワー半導体分科会第7回講演会

筑波大学まとめ

2020年12月9日~12月10日、Zoomによるオンライン開催。参加者約343名、ポスター講演件数42件。コロナ禍の影響により、例年と比べ参加者数、発表件数ともに大幅に減少したが、SiC, GaN, ダイヤモンドなどに関する最新の研究成果が報告された。

主な発表

① IB-6, FinFET効果による極狭ボディSiC-MOSFETの性能向上(加藤ら、ミライズ、京大、ケンブリッジ大)

FinFET効果を狙い、チャネル部のボディ領域を55 nmと極めて薄くしたUltra-Narrow-Body(UNB)構造を有するSiC MOSFETを作製し、特性の向上が得られたという報告。チャネル部をドライエッチングによって極めて薄いサイズに加工することで、界面から離れた領域での反転層形成と横方向のゲート電界緩和の効果(FinFET効果)が発現し、ボディ領域が厚い場合の素子(280 nm)と比較して、16倍程度のドレイン電流の値を得たとしている。

② IA-4, 改良高速On-the-fly法によるSiC MOSFETの正確なNBTI評価(坂田ら、筑波大、産総研、富山県立大)

SiC MOSFETにおける負バイアス時のしきい値変動(NBTI)を正確に評価する方法を確立し、変動メカニズムを議論したという講演。負バイアスストレスを印加後、しきい値変動を測定するまでに遅延時間がある場合、しきい値電圧変動が過小評価されるなどの問題があるため、pチャネルSiC MOSFETに対してOn-the-fly法を用いる方法を提案している。提案された手法により、短時間領域から長時間領域まで、物理現象をより正確に反映したNBTI特性を得ることができたとしている。

③ IB-17, 貼り合わせSiC基板を用いた熱処理不要なオーミックコンタクトの実現(石川ら、産総研、フェニテック、サイコックス)

単結晶4H-SiC薄膜と多結晶SiCとの貼り合わせ基板を用いて、ショットキーバリアダイオード(SBD)を作製し、熱処理なしで裏面オーミックコンタクトが取れることを実証したという報告。試作したSBDの順方向降下電圧Vfは、単結晶基板の場合よりも0.1 V以上低くなっており、これは多結晶SiCの高キャリア密度の効果のためとしている。また、貼り合わせ基板の場合、オーミックコンタクトを取るためのRTA処理のあり・なしで、Vfがほとんど変わらないことが明らかとなった。また、裏面メタルの剥がれテストにおいても、大きな問題は無く、貼り合わせ基板により、低コストかつコンタクト熱処理不要なデバイスの実現が可能であることを示した。

④ IB-18, 3C-SiC多結晶と4H-SiC単結晶の貼り合わせ基板上に形成されたパワーデバイスのI-V特性評価(霜野ら、ミライズ、サイコックス)

3C-SiCと4H-SiCの貼り合わせ基板を用いてpnダイオードとトレンチMOSFETを作製し、I-V特性を評価したという報告。貼り合わせ基板を用いて基板コストを低減するという試みが増えているが、単結晶層と多結晶層の接触抵抗などがデバイス特性に与える影響が懸念されていた。今回試作したpnダイオードの順方向降下電圧Vfは、単結晶基板の場合よりも0.5 Vほど低くできることが明らかとなった。これは、貼り合わせ基板の多結晶層の抵抗率が単結晶の場合の半分程度であるためとしている。降伏電圧の歩留まりも概ね良好であった。

⑤ IB-10, 4H-SiC CMOS inverters fabricated by ultra-high-temperature gate oxidation and forming gas annealing(Kidistら、阪大)

阪大のグループはこれまでに、超高温熱酸化とフォーミングガスアニール(FGA)を用いることで、窒化処理を用いた場合に問題となる負方向へのしきい値変動を抑えたnチャネルおよびpチャネルSiC MOSFETを報告してきた。今回は、この酸化手法を用いてCMOSリングオシレータを試作し、CMOSインバータ動作を確認できたことを報告した。超高温熱酸化のみだと、nチャネルMOSFETの移動度が低く、オシレータ波形の立下り時間が長くなるが、FGAを施すことによって特性が改善することなどを示している。

⑥ IA-01, トレンチ構造を持つ縦型二次元正孔ガスダイヤモンドパワーMOSFETの大電流密度(20 kA/cm2, 710 mA/mm)・低オン抵抗化(2.5 mΩ cm2)(角田ら、早稲田大)

(100)面上にVトレンチ構造を持つpチャネル縦型二次元正孔ガスダイヤモンドMOSFETを試作し、最大ドレイン電流密度20.2 kA/cm2、オン抵抗2.5 mΩcm2を達成した。それに加え、(111)面上に六角形トレンチ構造を持つダイヤモンド縦型二次元正孔ガスダイヤモンドMOSFETを試作し、最大電流密度710 mA/mmを達成した。nチャネルSiC, GaNに匹敵する性能のpチャネルパワーFETをダイヤモンドで作製できる可能性を示し、高速高出力相補型インバータの実現が期待できるとした。