1. ホーム
  2. 国内外のニュース>
  3. 学会報告>
  4. 第81回 応用物理学会 秋季学術講演会

国内外のニュース

第81回 応用物理学会 秋季学術講演会

筑波大学まとめ

2020年9月8日~11日@オンラインにて開催。15.6 IV族系化合物におけるSiC関連発表数は25件。その内訳は、京大5、阪大1、大阪電通大1、法政大1、名大3、広島大2、愛知工業大1、横国大3、記念講演(東レ・日立)、東大1、東芝1、神戸大1、三重大1、弘前大1、サムコ株式会社1。講演会全体の講演数は2,434件、参加者は8,113名。コロナ禍の影響により講演数は例年の4,165件から大幅減となり、特に企業からの講演が少なかった。一方で、オンライン開催で参加しやすかったことや、非登壇の学生は無料で参加できたためか、参加者数は昨年の秋講演会の6,166名から大幅増であった。

主な発表

① 10p-Z23-13 . 酸化過程排除プロセスによる高品質 4H-SiC/SiO2界面の形成(立木ら, 京大)

京大のグループは、堆積したSi膜を低温で熱酸化することをベースにした手法で、優れたSiO2/SiC界面を実現できることを先月プレスリリースしていたが、今回の報告はそれとは異なり、堆積膜によりSiO2を形成することによっても優れたSiO2/SiC界面を実現できることを明らかにしたものである。まず、SiCの熱酸化自体が良くないと考え、予備実験としてSiC上にSiO2を堆積し比較を行ったが、通常の熱酸化膜と堆積膜による顕著な差は見られなかった。そこでSiO2堆積前にSiC側に欠陥が存在していると考え、SiO2堆積前に水素エッチング(数nm)を行い、SiC表面近傍の欠陥除去を行ったところ、伝導帯近傍で従来の1/10程度の界面準位密度を得た。その後、高温窒素アニールを行うことで、酸化膜側の欠陥を低減することで、高品質な界面を形成できることを明らかとした。ノーマリオンではあるが、Si面で85 cm2/Vsという極めて高いチャネル移動度を実現した。また、犠牲酸化を少しでも行うと、界面準位密度は増加する結果を示し、水素アニールによる基板側の欠陥除去が重要であることを証明した。

② 11a-Z23-1. 高温アニールおよび熱酸化処理による高純度半絶縁性 4H-SiC 基板のフェルミ準位の変化(具ら, 京大)

高温アニールや熱酸化を施したHPSI-SiC基板の電気的性質を評価した報告。アニール条件や酸化条件を変えた各素子のフェルミ準位がミッドギャップ付近であったことから、ミッドギャップ準位が半絶縁性を支配していることを確認。また、各条件におけるフェルミ準位の変化から、炭素空孔(Vc)が半絶縁性へ一定の寄与を与えているとした。

③ 11a-Z23-3. 4H-SiC における c 軸方向の電子移動度の評価(石川ら, 京大)

c軸方向の移動度を、(11-20)基板とHall bar構造を用いて評価した報告。抵抗率の比を用いてドリフト移動度の異方性を議論したところ、温度が高いほど、またNdが高いほどドリフト移動度の異方性が小さい傾向にあることが確認された。講演者らは、高いエネルギーを有する電子の割合が高温ほど、またNdが高いほど大きいことから、伝導帯の底ほどドリフト移動度の異方性が高い可能性を考えた。そこで、伝導帯底での有効質量の比が室温でのドリフト移動度の比と似ていることから、有効質量の異方性が強く影響していると考察した。

④ 11a-Z23-5. Al 濃度 1020 cm-3台前半での p 型 4H-SiC エピ膜の電気抵抗率の温度依存性と Al 濃度との関係(近藤ら, 大阪電通大)

Al濃度を変化させ、p型SiCの電気抵抗率との関係を調査した報告。p型内正孔の伝導機構として、バンド伝導・最近接ホッピング伝導(NNH伝導)・VRH伝導の3要素を考え、それらの温度と抵抗率の関係からどの伝導が支配的であるかについて調査した。結果として、Alが低濃度である場合、低温でNNH伝導、高温でバンド伝導であったのが、濃度を増加させていくと、低温でVRH伝導、高温でバンド伝導となり、最終的にはVRH伝導が支配的となる。この結果から、Alの濃度が高くなるにつれ、フェルミ準位付近の局在準位が増加するとした。

⑤ 11a-Z23-8. シリコンキャップアニールを行った 4H-SiC 表面の電気伝導機構の解析(花房ら, 広島大)

広大のグループは、以前よりSiC上にSi層を堆積した後に熱処理を行うシリコンキャップアニール(SICA)という手法により、シンタリング無しで低抵抗オーミックコンタクトが得られることを報告してきた。今回は、Al電極を表面・裏面に形成したショットキーバリアダイオード(SBD)を評価することで、SICAを行うことで導入される欠陥の量や電気伝導機構の解析を行った。SBDの電気特性を確認するとSICAの熱処理温度が増加すると、逆バイアスの漏れ電流が増加することが確認された。この電流を従来一般的に用いられている熱電子電界放出(TFE)モデルで解析すると、熱処理温度1100 ℃以上でフィッティングができないことが分かった。そこで、Thin-Surface-Barrier(TSB)モデルを用いて解析すると、1100 ℃以上でもうまくフィッティングでき、その際のフィッティングパラメータから、SICAを行う温度が増加すると、SiC表面2 nm以内に1019 cm-3 を超える欠陥が導入され、それによりオーミック接触が得られていると考察した。