SiCに関する技術情報
フラットバンドシフト電圧
MOS構造のバンド図において、半導体のバンドがフラットになった状態(半導体の表面ポテンシャルが0)をフラットバンドという。通常、理想的な(界面や酸化膜中に電荷がない)場合でも半導体のフェルミ準位とゲート電極の仕事関数の差によって、ゲート電圧を0Vとしてもフラットバンドにならない。仕事関数差に相当する電圧をゲートに印加することでフラットバンドとなり、そのゲート電圧が理想的なフラットバンド電圧である。実際に作製したMOS構造には、界面及び酸化膜中にトラップ電荷や固定電荷が存在し、フラットバンド電圧は理想的なものとは異なる。理想的な場合からの電圧差をフラットバンド電圧シフトという。実際のフラットバンド電圧を求めるには、まず用いた素子構造の酸化膜容量と半導体不純物密度からフラットバンド容量を計算する。その容量値をとるゲート電圧がフラットバンド電圧であり、理想的なフラットバンド電圧との差からフラットバンド電圧シフトを求めることができる。フラットバンド電圧シフトに酸化膜容量を乗じることで、酸化膜・半導体界面の実効的な固定電荷密度が求められる。これは、酸化膜中の固定電荷を酸化膜・半導体界面にあるとした上に、界面準位に捕獲された電荷も含まれるために“実効”固定電荷と称される。
(矢野裕司)
- 2017年8月10日
- 印刷する