SiCに関する技術情報

バイポーラ劣化


 4H-SiCエピタキシャル膜中においては、らせんタイプ(バーガーズベクトル:a/3<11-20>)の基底面転位が、a/3<1-100>タイプの2本のショックレー型部分転位 (Si-core 部分転位、C-core 部分転位) に分解して存在している(ショックレー型部分転位については、「ショックレー型積層欠陥」の項参照)。SiC単結晶中に過剰キャリアが注入されると、Si-core 部分転位が移動することで、2本の部分転位間に存在するショックレー型積層欠陥の面積が拡大する[1]。そのためバイポーラ動作を含む電子デバイスでは、順方向導通時に伝導度変調層においてショックレー型積層欠陥が徐々に拡大し、順方向電圧降下の増大(通電劣化)を招くことが知られており、デバイスの長期信頼性を確保する上でその密度低減が大きな課題となっている。
[1] M. Skowronski and S. Ha, J. Appl. Phys. 99 (2006) 011101.

(宮澤哲哉)