SiCに関する技術情報
ゲートスタック
MOSトランジスタの心臓部ともいえるチャネルと、その上層のゲート絶縁膜、ゲート電極までを含めた積層構造を指す。ゲートスタックを構成する材料やゲート絶縁膜/半導体界面の特性が、トランジスタのしきい値電圧やオン電流、そして信頼性(温度及び電気的ストレスに対する耐性)を左右するため、適切な材料の選択はもちろん、その形成方法、界面構造制御など、多くの点に留意した技術開発が求められる。SiC MOSFETで特に問題となっているのが、酸化膜界面(SiO2/SiC界面)に存在する高濃度の欠陥準位によるチャネル移動度の低下と、チャネル領域の転位や表面ラフネスに起因したゲート酸化膜信頼性の低下である。チャネル移動度向上の手段として、酸化膜界面への窒素やリンの導入、異なる面方位を用いることなどが提案される一方、熱酸化膜ではなくCVD法などによる堆積膜をゲート絶縁膜とする試みもなされており、信頼性の問題やトレンチ型デバイスへの適用も含め、より一層のゲートスタック技術の発展が期待される。
(細井卓治)
- 2017年8月10日
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