SiCに関する技術情報
スーパージャンクション
従来構造のパワーデバイスでは、低濃度の厚いドリフト層によって耐圧を確保している。パワーデバイスの性能を示すオン抵抗と耐圧はドリフト層の濃度と厚さの依存し、トレードオフの関係がある。そのためドリフト層の設計(濃度と厚さ)の最適化では乗り越えられない材料性能限界が存在した。スーパージャンクション(SJ)構造は具体的には周期的なp型-n型のカラム構造を意味する。このSJ構造をパワーデバイスのドリフト層に適用することにより従来構造のパワーデバイスの性能限界を乗り越えることが可能になった。従来の素子では、逆バイアス時にドリフト層中に縦方向に空乏層が伸びていたのに対して、SJ構造は縦方向に伸びるp-n接合から横方向に空乏層が伸びる。この原理によって、不純物濃度の増加と逆バイアス印加時のドリフト層の空乏化を両立できるようになり、オン抵抗削減と耐圧の確保が両立できるようになった。現在、本構造を適用してSiの材料限界性能を超えたMOSFETが各社から販売されている。
(畠山哲夫)
- 2017年8月10日
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