SiCに関する技術情報

オーミックコンタクト


半導体基板上に形成された配線と半導体デバイスのn型領域やp型領域とを電気的に接続する重要な役割を担っているのがオーミックコンタクトである。コンタクト面に対して垂直に電流が流れ込む(又は流れ出る)垂直コンタクトと直角に折れて流れる水平コンタクトがある。コンタクトで発生するコンタクト抵抗はデバイスの導通損、スイッチング損を増大させる要因になるので徹底的に削減しなくてはならない。パワーデバイスではコンタクト抵抗率(Specific contact resistivity)ρcをデバイスのオン抵抗率(Specific on resistivity)RonAの1%以下に下げることがコンタクト開発の目標になっている。
SiCパワーデバイスはSiパワーデバイスが不得手とする高耐圧の領域で、低損失で動作することを強く期待されている。高耐圧と小中耐圧領域を仕切る境界は概ね600 V~1 kVの範囲である。一方、パワーデバイスの理論RonAは耐圧とともに減少してゆく性質があるから、最も小さなコンタクト抵抗が要求されるのはこの耐圧境界付近で動作するデバイスと言える。4H-SiCを用いた1 kV耐圧縦型パワーデバイスの理論RonAは約10-3 Ωcm2弱であるから、要求されるρcはその1%の10-5 Ωcm2となる。
 SiCへのコンタクト形成法として広く普及している方法は高濃度にドーピングした不純物領域にキー元素を含む金属材料を蒸着したあと、1000℃くらいの温度で急速熱処理(PDA: Post-Deposition Anneal)してできた反応層とSiCとでコンタクトを構成する方法である。キー元素はn型コンタクトではNi、p型コンタクトではAlである。論文レベルでは4H-SiC (Eg=3.2 eV)において、n型でρc = 3×10-7 Ωcm2、p型でρc = 10-6Ωcm2が達成されている。

参考文献
[1] D.K. Schroder, “Semiconductor Material and Device Characterization (2nd ed.),” pp.133-199, Wiley-Interscience, New York, 1998.
[2] 荒井和雄、吉田貞史共編, “SiC素子の基礎と応用(第1版, オーム社)” 第3.4節, 平成15年.
[3] 松浪弘之ほか共編, “半導体SiC技術と応用(第2版, 日刊工業新聞社)” 第7.4節, 2011年.

(谷本 智)