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基礎知識資料集

 

デバイス・プロセス分野

TLM法

コンタクト面に垂直に入った電流がデバイス表面で折れて水平方向に流れる態様のコンタクトの接触抵抗率(Specific contact resistivity)ρcを精度良く測定する方法として広く用いられているのが伝送長法(TLM/Transfer length method、通称TLM法)である。基礎になるモデルが伝送線モデル(TLM/Transmission line model)であって、どちらも”TLM”と呼称されるので紛らわしく注意が必要である。水平コンタクトでは電極の端部に電流が集中して流れる。伝送線モデルはこのような水平コンタクトを、微細な接触抵抗子(抵抗率ρc)と表面導電層抵抗子(シート抵抗ρs)とが梯子型に結合した分布定数回路だと見做して記述するモデルである。コンタクトの全長をD、幅をZ、表面導電層の厚みをゼロ、コンタクトに流れ込む全電流を I0 とすると、接触層の電圧は、
  V(x) = { I0cρs)1/2cosh[(D-x)/LT] }/[ Zsinh(D/LT) ]  (1)
で記述される。ここで
  LT = (ρcs)1/2 (2) 
である。LTはV(x)が1/eに減衰する距離(Transfer length)に対応し、TLMの名称の起源にもなっている重要な量である。マクロ的なコンタクトの全抵抗Rcは、定義から、コンタクトの電流流入端の電位差V(0)をI0で除したものであるから、(2)の関係を使ってつぎのように表される。
  Rc = V(0)/I0 = (ρc/LTZ)coth(D/LT) あるいは = (ρsLT/Z)coth(D/LT)  (3)
D > 3LTとなるような評価用コンタクトを用意すればcoth(D/LT) ≒ 1となるので、式(3)は簡単になって、
   Rc ≒ ρc/LTZ あるいは ≒ ρsLT/Z  (4)
LTとRCを実験的に決定して、式(2)と(4)を連立させれば、ρcとρsを一挙に求めることができる。
 実際の伝送長法では、図のような複コンタクト構造体を使用してLTとRcを決定する。電気的に孤立させた長方形n型層(またはp型層)に短冊状のコンタクトを、間隔Lを変化させ配置した構造体である。D >> L、δ( > 0) = W - Z ≒ 0、接触層の厚みはLに比べて充分小さいものとする。隣接するコンタクト間の全抵抗RTはコンタクト2個のコンタクト抵抗2Rcと中間の半導体層の抵抗(ρs/Z)Lの和であるから
  RT = (ρs/Z)L + 2Rc ≒ ρs/Z(L + 2LT)  (5)
である(右辺の変形は式(4)を代入)。隣接する2つのコンタクト間の総抵抗RTは間隔Lの1次関数になる。図のコンタクトを測定してRTとLの近似直線を得たとき、式(5)から明白なように、x切片から2LTが、y切片から2Rcが得られる。

(文献)
[1] D.K. Schroder, “Contact resistance, Schottky barriers and Electromigration,” in Semiconductor Material and Device Characterization (2nd ed.), pp.133-199, Wiley-Interscience, New York, 1998.
[2] 荒井和雄、吉田貞史共編, “コンタクト抵抗ρcの測定方法”, SiC素子の基礎と応用(第1版, オーム社)” 第3章末コラム, 平成15年.

(谷本 智)